陶芸における絵付けの技法は大まかに、下絵(染付)と上絵(色絵)があります。
今回は上絵について簡単に説明します。
下絵と上絵の判り易い分類の仕方として
器の表面のガラス質、釉薬(ゆうやく・うわぐすり)の下に描いてあるものが「下絵」
ガラス質の上から描いたものが「上絵」です。
<歴史的なお話>
日本国内における上絵で有名な産地は、有田や薩摩、鍋島の九州各窯、九谷等の北陸、それと京焼・清水焼です。
海外に目を向けると、ロイヤル・コペンハーゲン、マイセン等のヨーロッパと景徳鎮等の中国陶磁器が有名でしょうか。
日本国内における上絵の歴史は、九州より始ったと言うのが定説になっています。
寛永期に柿右衛門が、中国明代の赤絵と同様のものを作り出すことに成功したのが初めとされ、
京都に於いては柿右衛門より少し後に、野々村仁清が成功したとされています。
更に時代は下がり、京都の陶工永楽善五郎が招きにより加賀に赴き、上絵の技法を伝えたのが九谷の始まりとされます。
始まりの時期の前後はありますが、見栄えの晴れやかさ、美しさ、その場に花を与える存在感等、
各産地独特の上絵のスタイルがあり、上絵だけの収集家も居るくらいに、奥が深く、幅も広い魅力あふれた陶磁器の技法です。
有田の空白を生かした絵画の様な美しさ
九谷の独特な色使いの美しさ
薩摩の金彩を多用した派手な美しさ
京都の様々な技法の多面的な美しさ
それぞれの産地を見比べてみるのも楽しいかもしれませんね。
<技術的なお話>
上述したように、釉薬の上から描くのが上絵です。
【下絵の制作手順】
成形(ろくろ、手ひねり等)→素焼→絵付→施釉→焼成(本焼)→完成
【上絵の制作手順】
成形(ろくろ、手ひねり等)→素焼→施釉→焼成(本焼)→絵付→焼成(低過度焼成)→完成
この様に基本的な手順が違ってきます。
勿論、下絵と上絵を組み合わせたものもあり、その場合は更に下絵の手順が加わり、勿論手間も掛かります。
上絵も、普通の色絵と金彩、銀彩などは焼成温度が違う為、もう一度上絵の窯を焚く場合もあります。
上絵の最大の魅力は、下絵では出せない鮮やかな色と多彩な色の幅です。
各産地により、例えば「赤」でも朱に近いものから、紅色、臙脂色に近いものなど様々ありそれを比べるだけでもとても楽しめます。
その他、深い話は参考URLからご覧ください。
<参考URL>
京焼・清水焼
野々村仁清
有田焼
九谷焼
薩摩焼